密室の恋人
「蒼汰さん、こんなこと言うと怒るかもしれませんけど。

 私、陸人さんが居てくれてよかったと思います。

 あの人が居なかったら、私、貴方が好きだと気づかないままだったかもしれません」

 凛子の肩を抱いた蒼汰は、
「そうだな。
 それで、お前は侑斗と結婚して子だくさんの母親になってたかもな」
と言い出す。

 何故、侑斗、と苦笑いした。

「なんだかぼんやりしている間に、お前がいき遅れないようにと両家で話がまとまりそうだからだ」
と言う。

「ちなみに、侑斗はサッカーチームほど子供が欲しいそうだぞ」

 そういえば、早く子供が欲しいとか言ってたな、と思い出す。

 案の定というか、蒼汰との結婚を知った凛子の家族は大層浮かれた。

 母親とかイケメン好きだからな、と思う。

 そういう意味でも、ぼんやりしてたら、侑斗となんて話が進みかねないところだったのも確かだ。

 でも、今、私の目の前には、蒼汰さんが居る。

 幾つもの分岐点をくぐり抜け、奇跡的にこの場所にたどり着けた気が今はしていた。

「凛子……」

 顔を近づけ、そう蒼汰が呼びかけてきたとき、蒼汰の口が違う形に動いた。

「やあ、凛子ちゃん。
 結婚おめでとう」

 蒼汰がいつもと違う表情で笑う。

「じょ、成仏してないじゃないですかーっ」
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