空に舞う桜
プロローグ
どうして、こんな事になってしまったんだろう。
「はあっ……はあっ……」
あちこちから、大砲の音と怒号が聞こえてくる。
町から離れているこの林まで、音は響いていた。
そして、私は今、その林の中を全速力で走っている。
ある人を、助けるために。
「お願い、生きてて……
絶対に、見つけるから……!」
強く、そう願って。
私は、また地を蹴る。
あの人は……あの人だけは、失いたくないの。
やっと、あの人なら心から大好きだって、言えるって思ったの。
だから……
「死なないで、丞さん……!」
薄暗い林の中を、私は必死に走り続けた。
息苦しくて、頭がぼんやりとするけど、足だけは止めない。
私が、あの人を助けるんだから。
……だけど、こんな状況なのにも関わらず、私の脳裏には、丞さんと出会った日の出来事が、思い浮かんだ。
まるで、思い出の中を駆け抜けるように……
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