空に舞う桜
「いやあああ!!」
名前を呼んだ途端、彼女は叫びだした。
その声に、すべてが掻き消され、やっと正気に戻った。
俺は、今まで何を考えて……
「佐渡!」
副長が彼女の肩を慌てて掴む。
座り込んでしまった彼女は、狂ったように叫び続ける。
俺も、彼女に手を伸ばした。
「佐渡……」
だが、伸ばした手を見て動きが止まった。
血にまみれた、汚い手だった。
この手で、彼女に触れて、何を言えるというんだ。
伸ばした手を、グッと握りしめてゆっくりおろした。
彼女を、あんな風にさせないために動いていたはずなのに。
俺は、何をやっているんだ……
副長が彼女を落ち着かせると、2人の隊士を付き添わせ、帰らせた。
その後ろ姿を見ながら、唇を噛み締めた。
俺は、何を考えていたんだ。
どんな理由があっても、俺は人の命を奪っているんだ。
それを、俺は忘れそうになっていたのか……