空に舞う桜
すると、部屋の外から声をかけられた。
「失礼します、佐渡です」
「佐渡……」
鈴のような彼女の声に、思わず反応してしまった。
障子がスッと開くと、俯き気味の佐渡が入ってきた。
「お茶をお持ちしました」
島田に湯飲みを渡した彼女の手は震えていた。
「ありがとう、佐渡くん」
「いえ……」
微笑んだ彼女は、どこか辛そうに見えた。
「山崎さんも、どうぞ」
「ああ」
湯飲みを受け取るも、佐渡は1度も目を合わせなかった。
「なあ、佐渡」
「はい?」
「……眠れて、いるか?」
そう聞くと、彼女は一瞬だけ目を見開いた。
その拍子に、一瞬だけ俺と目が合った。
だが、すぐに逸らしてまた微笑んだ。
「大丈夫ですよ」
そう言うと、彼女は小さく頭を下げて行ってしまった。
「……あまり、顔色がよくありませんでしたね」
「ああ。よほど、衝撃が大きかったんだろうな」
「原因は、我々ですから。どうにか支えてあげられないものですかね」
「そうだな……」
島田の言葉に頷いたところで、部屋の障子が勢いよく開いた。
「山崎くんいる?!」
飛び込んで来たのは、羽織を羽織ったままの藤堂さんだった。