空に舞う桜
「……ここにいますが」
「あー良かった!早く手当てしてくれ!」
切羽詰った藤堂さんの声にハッとした。
まさか、誰か重傷を負ったのか?!
「分かりました、すぐに手当てしましょう。
怪我をしたのは、どなたですか?」
「俺!」
「……はい?」
聞けば、巡察の最中に腕を切ってしまい血が止まらなくなったとのこと。
確かに、腕から血が流れているが明らかに軽症だ。
こんな傷で大慌てするのは、藤堂さんらしくない。
「とりあえず、手当てはしますが……なぜ、あんなに慌てていたのですか?」
「え?だって、千里に見られるかもしれないだろ?」
「え……」
「ここまで来るのもヒヤヒヤしたぜー。
千里と鉢合わせしたらどうしようかなー、とか。
この部屋にいたらマズイよなー、とかさ。
すっごい考えちゃったよ」
「佐渡を怖がらせないため、ですか……」
「そう!もう、泣かせたくないしな」
「……手当てを始めましょう」