空に舞う桜



手当ての最中も、藤堂さんはずっと佐渡を気にかけていた。




「俺、頭にも傷作っちまったろ?
 血とか生傷見せて、また怖い思いさせたくないんだよ。
 千里、池田屋ですっげえ取り乱したんだろ?」




「ええ、そうですね……」




藤堂さんの手当てを終えると、今度は沖田さんが顔を出した。




「山崎くん、島田くん、少しかくまって」




「今度は沖田さんですか……」




「どうされました?」




島田が尋ねると、羽織りを着たままの沖田さんが口に人指し指を当てた。




部屋にいる全員が息を潜めていると、部屋の前をかわいらしい足音が通り過ぎていった。




「もう大丈夫そうだね」




「沖田さん、巡察帰りですか?」




「そう。でも少し汚れちゃって」




そう言うと、沖田さんはヒラっと羽織の袖を見せた。




赤い血がだんだら模様を塗りつぶすようにベッタリ付いていた。




「すぐに洗いに行こうと思ったんだけど、千里ちゃんとすれ違いそうだったから避難させてもらったの」




「沖田さんも、佐渡を怖がらせないために、ですか?」




「そうだよ、山崎くん。
 かくまってくれて、ありがとう。
 平助、報告に行こう。」




「おう!そんじゃ、ありがとね山崎くん」




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