空に舞う桜
「え、嘘、なにこれ……」
目の前に広がる光景を、私は受け入れられなかった。
だって、そこには……
何も、無かったんだもの。
そこにあるはずの神社も、私の家も、桜の木も、イチョウの木も、全て無くなっていた。
「お、おじいちゃーん?」
まっさらな地で、私は家族の名前を叫んだ。
だけど、返事は返って来ない。
どういう事……?
ここに確かに、神社があるはずなのに……
もしかして、道を間違えちゃったのかな?
そう思って、引き返そうとした時……
ガサガサッと林の中から音がした。
「っ!」
だ、誰か来る!
私が身構えると、林の中から全身黒ずくめの人が出てきた。
「?!」
何、この人……
もしかして、不審者?!