空に舞う桜
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数日後、チャンスはすぐにやってきた。
「おい」
「は、はいっ!」
朝ごはんの食器を洗っていると、土方さんに声をかけられた。
振り返ると、今日も怖い顔の土方さんが……
「な、なんでしょうか……」
「茶を淹れろ、2人分」
「!」
あの日と、同じ注文だ……
私は、すかさず頭を下げた。
「すみません!」
「あ?」
「その……私、お茶の淹れ方よく分かんなくて……
こんな事まで聞いていいのか分からなくて……
その、だから先日も口篭ってしまって……」
うわああ!言ってしまった!
だ、大丈夫かな……
私の言葉、ちゃんと届くかな……
すると、土方さんはため息をついた。
「それならそうと、早く言え。
ったく……」
「え……」
顔を上げると、土方さんは困った顔をしていた。
「俺は、まだお前を知らねえんだ。
お前が話をしてくれなきゃ、伝わるもんも伝わらねえ。
お前を理解できねえんだよ」
「す、すみません……」