空に舞う桜
「薄い」
「えっ?!」
あ、味薄かったですかあ……
でも、その後フッと土方さんは笑った。
「淡くて薄い味だが、とても優しい」
「あ……」
土方さん、笑うとすごく綺麗……
男の人だけど、女の人みたいにすっごく綺麗。
現代でも、イケメンって言われるんだろうな。
「とても、お前らしいぞ」
「あ、ありがとうございます……」
優しい笑顔が、私に向けられる。
目が合った瞬間、少しだけ顔が熱くなった。
もう、怖くない。
彼だって、普通の人だ。
……そうか、話をしなければ、こんな事にはならなかった。
知らないうちに、私は人と壁を作っていたのかも……
「あ、そうだ。
あの、もう1つのお茶は、どなたにお持ちすればいいですか?」
「あー……」
何故か私から視線を逸らした土方さん。
首を傾げると、彼はチラリと私を見た。
「お前にだ」
「え?」
「よく働いているからな」
そう言って、土方さんは湯飲みに口をつけた。
目の前の私は、ポカンと間抜け面。
もしかして……土方さんが、私を労ってくれた?
「っ!!」
うわあ、うわあー!!
何それ、すっごい嬉しい!
心の底から喜びが溢れてきて、にやけながら頭を下げた。
「ありがとうございます!!
いただきます!」
ちょっぴりぬるくなったお茶を、そっと口に含んだ。
「……薄い」