空に舞う桜
どれくらい、日にちが経っただろう。
洗濯物をかかえながら、歩く足をふと止めた。
縁側から見上げると、広がっていたのはどこまでも澄み渡る青い空。
吹く風は、夏の香り。
ここでの生活も、大分慣れてしまった。
これで、いいのかな……
帰れる方法は、まだ見つかってないのに……
「はぁ……」
一抹の不安を抱えながら、毎日を過ごしていた。
今日だって、そうだ。
「ああ、いた。
佐渡」
「はい?」
振り向くと、山崎さんが私を追って歩いてきていた。
「山崎さん、お疲れさまです。
今日は屯所にいらっしゃるんでしたっけ」
「いや、これから仕事で外にでる。
それで、悪いんだが、この薬を山南さんに届けてくれないか」
そう言って、山崎さんは白い包み紙を差し出した。
「これは……?」
「痛み止めだ」
山南さんに、痛み止め?
ポカンとしていると、山崎さんが声を潜めた。
「先日ケガをしてしまった腕が、まだ痛むんだそうだ」
「あ……」
「では、頼んだぞ」
「はい、分かりました!」
よし、じゃあ早く洗濯物片付けなきゃ!