僕はそれでも恋をする


「やっぱり自惚れていたのかなぁ……」


もしかしたら、って期待していたかもしれない。


でも、違うなら、なんで名前で呼ばせてくれるんだろう。


だって、普通男女で名前呼びなんてしないよね。


それに、私の事可愛いって……


「あれも全部、嘘だよね……」


楽しんでいたのは、私だけ。


よく考えてみれば、“柳瀬君“はいつも色んな人と喋ってる。


男友達は多いと思う。


でも、女の子と喋っているところもよく見掛けていた。


中性的で可愛いから、男女どちらにも人気で。


私は、その中の1人で。


あー泣いちゃいそうだな。


私、凄く好きなんだ。


柳瀬君が。


「おー、誰かと思えば早川じゃん。何やってんだぁこんなとこで」


目に溜まった涙が一瞬で引いた。


この声は知ってる。


「椎名、君。どうしたの? こんなところに」


私の言葉に、椎名君がブッと吹き出した。


「俺が先に聞いたんだけど。飛んでったボール取りにきたら1人でさみしそうにしてっからさ」


そう言って、レンガの上に座る私の隣で地面にドカッと腰を下ろす椎名君。


うわ、背高いなぁ本当に。


「何悩んでんの?」


「え?」


「あんだろ、悩んでること。顔に書いてるぞ」


「……」


悩み、そんなに分かりやすいのかな。


「んだよひでえな、俺に話すのは嫌ってか?」


「そ、そういうのじゃないよ! でも、分からない……から



椎名君は、柳瀬君の友達なのに。


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