僕はそれでも恋をする


というか。


渚ちゃんって……照れるんですけど。


柳瀬君の好きな人って、誰なんだろう。


「柳瀬君って、好きな人……いるの?」


ずっと気になっていたから、ちょっとだけ。


「……うん、いるよ」


少し時間が空いて、柳瀬君がうなづいた。


やっぱり、いるんだ。


「……なぎっ……早川さん、は?」


あれ、なんでだろう。


呼び方が変わった瞬間、胸の奥がチクリと痛んだ。


私だって、名前で呼んでないのに。


「私も……いる、かな」


散々私を惑わせる、悪魔のような天使が。


「そ、そっか」


その言葉を最後に、私たちは学校に着くまで一言も交わさなかった。


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