僕はそれでも恋をする
噂をすれば何とやら、椎名君とフミちゃんの2人組と再会。
2人とも、驚く様子はなく歩み寄ってきた。
「いえい。リア充デビューしちゃった♪」
「まぁだろうね。あんた達は分かりやすいほど両想いだったから」
チトセちゃんの言葉に、フミちゃんは少し寂しそうに笑って言った。
え、フミちゃん……?
「あー! オレも彼女作ろ! ナンパだなこれは」
「たらしね、ほんと」
「うっせえ。まさかリア充を春人に先越されるなんてなぁ」
ニヤニヤと柳瀬君を見入る椎名君に、頬を赤くした柳瀬君がべーッと舌を出した。
そっか。
私達、もう恋人同士なんだ。
一目惚れして、期待して、不安になって。
柳瀬君の言葉は嘘じゃなかった。
それが、すごく嬉しい。
これからどうなっていくんだろう。
ただ、そんなワクワクした気持ちが私の心を埋めている。
もっと知りたいな。柳瀬君のこと。
「ねえ、あれ乗ってみない?」
柳瀬君と椎名君の小さな口争いを眺めていると、チトセちゃんが一際大きなアトラクションを指さした。
「観覧車……」
テレビやアニメなんかで、恋人同士が2人きりで乗る例の。
「もしかして、柳瀬くん観覧車も駄目だったり?」
「え、何でなにも乗れないって思ってるの! 観覧車くらい乗れるよ! 行こう、早川さん」
ギュッと手を握られ、指先がしびれるような感覚に包まれる。
「行くって、あたしは行かないよ。5人で乗りなよ」
「へ?」
フミちゃんの言葉に、全員が唖然として振り返る。
「なんで?」
「もう疲れたから待ってるよ」
「はぁ? お前なぁ、観覧車なんかで疲れねーての。おら行くぞ」
椎名君の差し出す手を、フミちゃんはバシッと叩いてしまった。
「ほんっとに……あんたのそういう所、大ッ嫌い」
「は、意味わかんねえよ! 何が気に入らねえわけ?」
「自信過剰、唯我独尊そのうえ優柔不断で何がしたいのか全然分からない! あんたにデリカシーってものはないわけ!?」
突然、フミちゃんと椎名君が喧嘩を始めてしまった。
どうしてそうなったのか全く分からない私はただあわあわとするしかできない。
フミちゃんって、椎名君の事、好きなんだよね……?
椎名君は……
「おい、こんなとこで喧嘩すんなよ恥ずかしい」
高山君がそう言ったと同時に、高山君の拳骨が椎名君の後頭部にゴツンと当たる。
「ッ痛って! なんでオレが殴られんだよ!」
「馬鹿。女子は殴れないだろ」
「あぁ!? オレが何したって――」
「……ごめん」
椎名君の言葉を遮ったフミちゃんの声は、今までのフミちゃんと違ってか細かった。