僕はそれでも恋をする


「ま、まぁ2人とも仲良くしよ? 観覧車……やめよっか」


「いや、だからあんた達だけで」


「あーなんだよお前。そんなにオレと乗るのが嫌なわけ?」


「……嫌よ」


ストレートに答えたフミちゃんに、椎名君はさすがにショックを受けたようでなにも返さなくなった。


でも、どうしてだろう。


フミちゃんは、どうして椎名君が好きなのに嫌いとか嫌とか……。


「…………じゃんけんしようよ」


そんなおどけた声に、私達は今日一番に絶句した。


「じ、じゃんけん……?」


「うん。じゃんけんして、負けた人が桜さんとここで待つ。ってことにしよ」


「は? それじゃあ、お前ら2人ずつ入れなくなるぞ?」


柳瀬君の言葉に、全く意味が分からないと疑問を投げる椎名君。


私も、柳瀬君の言いたいことが分からない。


「別に、恋人同士で遊びに来たわけじゃないんだからさ。せっかく6人で来たのに、喧嘩するのはもったいないよ。ね?」



「……あ、そっか。あたし達……そういうのが目的じゃなかったもんね」


1ミリも曇りのない笑顔で、柳瀬君はニコニコしている。


そんな彼が、少し大人ぽく見えたのは、きっと私が考えていた事と違うから。



私は、君のことしか考えていなかった。



「だから、交代で乗ろうよ。早川さん、それで大丈夫?」



「え? あ、うんっ! 私も、賛成!」


私が皆のことが分からないのは、私が分かろうとしなかったから。


柳瀬君と一緒に。ただそれだけが私の望んでいたこと。


だから、柳瀬君の爽やかなまとめ方に、私は今初めて自分を見失っていたことに気付いた。


フミちゃんの事が分からない以前に、私は自分の事しか考えていなかったんだ……。

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