僕はそれでも恋をする
「――なんか、さすがっていう静けさだね」
夕焼けの大きな弧が空にできる頃、私達は1日の楽しみを終えて、今バスの中にいる。
並びは朝と同じ。
違うのは、後ろにいる男子3人組がすーすーと寝息をたてて眠っているところ。
みんな、はしゃいだもんね。
「フミちゃん、もう大丈夫?」
「……うん。なんか悪いね、私、取り乱しちゃって」
隣でしょんぼりしているフミちゃんが、別人のよう。
「ううん、最後は皆楽しくできたから。良かったよ」
チトセちゃんは少し申し訳なさそうに、フミちゃんにそう言った。
「……素直じゃないね、私も」
「え?」
「ううん、何でもないよ」
フミちゃん……。
「フミちゃんは、椎名君の事大好きだもんね」
突然のチトセちゃんが小さく呟いた言葉に、フミちゃんは顔を真っ赤に紅潮させてチトセちゃんを見た。
「そ、それはないっ……! 私は、別にあんなやつ……」
ん?
フミちゃんが、照れてる……?
あの気の強い凶暴なフミちゃんが!?
え、なんていうギャップ……!?
というか、本当に椎名君のこと、好きだったんだ……!
「天邪鬼ー。本人以外は皆知ってるんだからね〜♪」
「……私、もっと純粋な恋がしてみたかったよ……」