僕はそれでも恋をする



「――なんか、さすがっていう静けさだね」


夕焼けの大きな弧が空にできる頃、私達は1日の楽しみを終えて、今バスの中にいる。


並びは朝と同じ。


違うのは、後ろにいる男子3人組がすーすーと寝息をたてて眠っているところ。


みんな、はしゃいだもんね。


「フミちゃん、もう大丈夫?」


「……うん。なんか悪いね、私、取り乱しちゃって」


隣でしょんぼりしているフミちゃんが、別人のよう。


「ううん、最後は皆楽しくできたから。良かったよ」


チトセちゃんは少し申し訳なさそうに、フミちゃんにそう言った。


「……素直じゃないね、私も」


「え?」


「ううん、何でもないよ」


フミちゃん……。


「フミちゃんは、椎名君の事大好きだもんね」


突然のチトセちゃんが小さく呟いた言葉に、フミちゃんは顔を真っ赤に紅潮させてチトセちゃんを見た。


「そ、それはないっ……! 私は、別にあんなやつ……」


ん?


フミちゃんが、照れてる……?


あの気の強い凶暴なフミちゃんが!?


え、なんていうギャップ……!?


というか、本当に椎名君のこと、好きだったんだ……!


「天邪鬼ー。本人以外は皆知ってるんだからね〜♪」


「……私、もっと純粋な恋がしてみたかったよ……」


< 51 / 63 >

この作品をシェア

pagetop