僕はそれでも恋をする


「あ! 春ちょっと待って!」


「……はる?」


街中の歩道沿いにある1軒の服屋さん。


ガラス張りの壁越しに、3体のマネキンがオシャレな服を着て並んでいるのが見えた。


ここはゴシックやパンク専門の服屋さんみたい。


店内に並んでいる服はかなりゴスロリ率が高い。


「……、渚こういうの好きなの?」


「いや、あのねこれ、可愛くない?」


私が指さしたのは、オレンジの猫耳付きパーカー。


薄手で軽そうな生地で、ワンポイントの猫のイラストプリントがすごく可愛い。


「あー、うん」


春人の反応はあからさまに興味が無さそうだった。


春人、似合いそうなのにな。


「こういうの、嫌い?」


「うーん、嫌いじゃないけど。でも、こういうの着て欲しいとは思わないかな……」


あれ、意見のすれ違い。


私、着て欲しいって思っちゃったよ……!


「着て欲しくないのか……春人が着る?」



「は? 何言ってるの女物じゃんこれ」


否定するとこそこ!?


「もしかして、男物だったら着てくれるとか!?」


「いやいや着ないよ! 渚ってバカ!?」


「だって美味しいじゃん!」


猫耳パーカーとか可愛い男子が着るものだよ!


女物っていうところがまた良いの!


「美味しい……? 待って、渚が何の話してるのか分からない。何を食べるの」


「春人は知らなくていいの。ね?」


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