白と黒のコーヒータイム
「別れたなら別れたって言いなさいよ!」

「言おうと思ったらお前がフリーの男とは話す気にもならないとか…やさぐれたこと言い出すから躊躇ったんじゃねえか。」

「そ、それは…いつの話で!?」

「お前が気の弱そうな男にしつこくねっとり言い寄られていた辺りの話だよな?」

「はあっ!?」

それこそいつの話だと国見は開いた口が塞がらなかった。

「律儀な俺は国見との関係を壊さないためにわざわざ報告をしなかった訳だ。」

「どこが律儀よ。そんなの何年前の話?とっくに終わってるじゃないの!」

「吹っ切れたって報告は受けてないぞ。」

「そんなのわざわざ言う?覚えてないよ。」

「その言い分は激しく同感だな。」

わざとらしくも自分を正当化させる物言いに腹立たしい気持ちが沸き上がってくる。

しかし言い分が同じであれば片方だけを責めるのは難しい。

つまりは怒るに怒れないのだが、やっぱり国見にとっては納得の出来ない言い分だった。

「私が出会いを求めてたのは知ってるんだからさ、吹っ切れたのは言われなくても何となく分かるでしょ?」

それに対しては名村は何も言わず眉をあげて適当に受け流すだけらしい。

一体何がしたいのか、よく分からなくなってくる。

いつのまにか外されていた手が嵐の過ぎ去りを教えてくれた気がして人知れず安堵した。

あの強引なやり口は何だったのか、何がしたかったのかは見えていない。

でも解放されたことに胸を撫で下ろしているのは確かで、でも同時にふわりとした感情も残っていた。

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