白と黒のコーヒータイム
「嫌じゃないんだ。」

「い、いや!?そ、そんなことはない!」

「じゃあ嬉しい?」

「う、うれ…っ?そ、そんなこともない。」

結局どっちなんだと名村は楽しげに肩を揺らす。

怒るかと思いきや意外と機嫌のいい名村に今度は国見も首を傾げ始めた。

しかし口には出せず名村を眺めていると、気配を察知した名村が余裕の笑みを浮かべて挑発的に口を開く。

「何もまとまってない、そう思ってるだろ。」

「う…うん。」

「でもないぞ?色々分かった。国見の気持ちも…これからの持って行き方も。」

どこからくるのだ、その余裕は。

思わず言葉を失って目を見開いた国見に名村はこうも続けた。

「俺からはもう触れない。どんなに近づいても、こんな風に…。」

ゆらりと体を揺らしたかと思えば目の前には近すぎる名村の目が光る。

息がかかるくらいまで、それこそ息を食べられそうな位の近さまで迫ってきた名村は妖しげに囁いた。

「キスを迫ったとしても。…国見が踏み出さない限り俺からは進まないことにする。」

なんて破壊力なの。

あまりの色気にあてられて腰が抜けた国見はその場に座り込んでしまった。

手足全ての力が入らず、ただその目に名村を映す。

これが昨日までの友人の姿なのか。

人は心を解放すればここまで色を変えることが出来るのか。

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