白と黒のコーヒータイム
ゆっくりと膝を折って視線を合わせようとする色男の動きを見守るしかない。

これは拷問だ。

骨抜きにされて檻に入れられた気分だ。

なんてズルいのだろう。

「何も言わないな…戸惑ってんの?」

「そ、そりゃ…。」

「でもさ、国見。俺から言わせてみればとっくに答えは出てる筈なんだよ。」

答えとは何か、それを求めて国見は名村を見つめたまま目を細めた。

この落ち着きを取り戻す目処がたたない頭では何も考えが進みそうにない。

「知りたそうだな。」

そう呟くと妖しくも優しい笑みを浮かべて名村はより一層声を低く囁いた。

「…触れてみたら分かるかもな?」

これは罠か。

触れるって、どこに何を触れたらいいのだろう。

触れたらその先は何が待っているのだろう。

色香の漂う空気は脳を麻痺させていく、いや、脳を麻痺させたがために色香が漂ってきたのかも分からなかった。

何が正解か、それとも仕組まれたシナリオか、国見の目の前で試すように微笑む相手は紳士か悪魔か。

二つに一つ。

そして国見は本能的に名村の腕にやさしく触れた。

「…教えて。」

賭けに出ることはどうなることか、分かった上での行動だ。

自分が見つけられない答えを知っていると言うのなら教えてほしい。

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