生徒に恋しちゃいました
結城くんは不思議そうに首をかしげた。

「いや、そこは断ってもよかったんじゃ・・・内定もらったとこで働きたいって正当な主張じゃん。 それに、桜木女子はうちと違って進学率もいいし教師としてはやりがいあるんじゃないの?」


たしかに桜木女子は名の通った名門校で
、国公立大学への進学率も非常に高かった。
対する桜木男子はかつては名門だったけれど、ここ10年程で偏差値が各段に下がり、もはや名門とは呼べなくなっていた。

だけど・・

「それは関係ないわ。良い大学に進ませるだけが教師のやりがいじゃないもの。生徒が自分の望む道を見つけるお手伝いをするのが教師の仕事なんだからね」

「あ、そ。 桃子センセ、意外と暑苦しいタイプなんだ」

結城くんは私の教師論に若干ひいたようだった。目が面倒くさいと訴えている。

だけど私は構わず話を続けた。

生徒相手だったけれど、全て打ち明けてしまいたい気分になっていた。
結城くんの落ち着いた低い声の相槌があまり生徒を感じさせないせいかも知れない。


「それにね、良い機会かなって思って。
いい歳して男性恐怖症ってのもね・・
高校生なら、そこまで男って感じもしないかなぁって」

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