生徒に恋しちゃいました
「ここ、寮があるから。 それだけ」

適当な理由でごまかしてもよかったのに、俺は正直な理由を伝えた。

桃子センセイがどんな反応をするのか、少し興味があったからかも知れない。


「そういえば結城くんは寮生だったわね。なるほど〜。寮生活に憧れてか!
意外と可愛いところあるのね〜。

どう? 念願だった寮生活は? 楽しい??」


「・・・・楽しいデス。とっても」

無邪気に問いかけられ、そう答えるしかなかった。

男子校の寮生活なんか楽しいわけないだろ!!!
建物は古いし、部屋は狭いし、男ばっかだからなんか臭いし。
一応、朝と夜は食事が出るけれど、それもちっとも美味くない。


「寮に入りたかったから」なんて聞いたら、普通の教師は家庭不和とかそういう事をまっさきに思い浮かべないか?

桃子センセイなら俺の家庭環境を色々想像して、オタオタするだろうと思ったのにな。


まさか寮生活に憧れて・・で片付けられるとは思ってもいなかった俺は肩透かしを食らった気分だった。

物足りないから、ささやかな嘘をついてみる事にした。

「ホントはさ、うち、両親の仲が良くなくて。 俺、居場所がなかったんだ。
だから、寮に入りたかった」
























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