生徒に恋しちゃいました
切なそうな表情を作って、わざと桃子センセイから目を逸らす。

かえってきた反応はこれまた予想外のものだった。

「結城くん、嘘ついてない?」

桃子センセイはじっと俺を見つめる。

俺が見つめるのはいいけど、見つめられるのは居心地が悪い。

「何でそう思うの?」

「だって、結城くんはちゃんと愛されて育ってるように見えるから。嘘ついてないなら、結城くん、ご両親のこと誤解してるのよ」

「なんだよ、それ」

「先生の勘! でも、あたってるでしょ?
さっきの話は嘘・・だよね?」

そう言って、ふんわりと笑う桃子センセイは初めてちゃんと先生に見えた。

幼い外見のせいでつい錯覚してしまいそうになるけど、目の前の女は俺と違ってちゃんと大人なんだなと思い知った気がする。

何だか面白くないと思いつつ、俺は渋々うなづいた。

「両親は息子の俺からしたら気持ち悪いくらい仲いいです」

「やっぱり。 じゃあ、寮に入ってるのご両親はさみしいんじゃない?」

「いや。5年前に父親がオーストラリアに転勤になってさ。それがすっげーど田舎の何もないとこで、さすがについてはいけないなって母親と兄貴とこっちに残ることになったんだ。
けど、母親はさみしいって言って結局親父のとこいっちゃった。
それから俺は兄貴と二人暮らし」

これは本当の話だ。 両親は今もオーストラリアのど田舎に住んでいる。
辺鄙なところ過ぎて、俺は一度遊びにいったきりだ。

「お兄さんがいるのね」

「そ。 その兄貴が結婚することになったから、俺は寮に入ることにしたの」



















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