生徒に恋しちゃいました
「別に寮生活に憧れてたわけじゃないからね」

俺は念押しでそう言った。
男子校の寮生活に憧れてって・・・なんか誤解を生みそうだ。

「それよりさー、桃子センセイ。
リハビリの続きは? 」

すっかり忘れている様子の桃子センセイの手にもう一度自分の手を重ねてみた。

桃子センセイの肌は柔らかくて気持ちがいい。

ずっと触れていたい・・・

と、思ってたのに、その手はあっさり振りほどかれた。

「えっと・・今日はもうこのへんで大丈夫!ほら、この間のテストの採点とかあって先生忙しくて」

あ、赤くなってる。

いつもは触ると気持ち悪さで真っ青になる桃子センセイの頬が照れているのか、ほんのり赤く染まっている。

「ふっ」

「あ、何笑ってるのよ?」


「ん〜何でもナイ。
じゃ、今日はここまでにしといてあげるよ! 採点頑張ってね、センセイ」

俺は床に投げ捨ててあるカバンを取って、立ち上がった。

「あの、結城くん」

教室を出ようとする俺の背中に声がかかる。

「ありがとね。結城くんが色々気にかけてくれるおかげで大分この学校にも慣れてきたよ。 過剰に接触しなければ、気持ち悪くなることもなくなってきたし」

俺が振り返ると、桃子センセイははにかんだような笑顔を見せた。
























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