生徒に恋しちゃいました
事故現場?から一番近くの病院に私達はいた。

さすがに救急車を呼ぶほどの事態ではなく、タクシーで移動した。

一番派手に転んだおばさんはお尻を強打したものの、骨には異常が無かったようで家族の迎えでたったいま帰っていった。

おばさんとおばさんの旦那様は床に頭がつくんじゃないかってくらい頭を下げて謝ってくれた。


「3人とも大した怪我がなくて良かったね」

「・・・・」

隣に座る結城くんはさっきから不機嫌な表情を隠そうともしない。
わかりやすく、むすっとした顔をしている。

顔が整っているだけに迫力があって、結構怖い。

「えっと、どっか痛むかな??ごめんね、私の荷物運びなんかに付き合わせたせいで」

「俺は無傷だよ。 桃子センセイに庇われたから」

「それなら、良かった」

「全然、良くねぇよ。 なんで庇ったりしたんだよ。それ、傷跡残ったらどうすんだよ・・・」

今まで聞いたことのない低い声。
結城くんの方がどこか怪我したかのような痛々しい表情だ。

あの時、私をかばおうとした結城くんを押しのけて自転車の前に出た。

結果、私の身体は自転車に思いきり突き飛ばされて、転んだ拍子におでこを少し切った。
最初は出血量に驚いたけど、跡が残るような怪我じゃないと思う。
お医者さんも何も言ってなかったし。

それに、私のおでこに多少傷跡が残ったとしても別に誰も困らないし・・・


「こんなんでも一応先生だし、生徒に怪我させたくないのよ。
結城くんに怪我がなくて本当に良かった」













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