生徒に恋しちゃいました
「ちょっと、勝手に入ると怒られるって」

彼が後ろから追いかけてきたけれど、私は振り返らずに答える。

「よく見て、スーツ着てるでしょ。
本当に今日からここの先生なんです」

「・・・マジ?? どう見ても、中学生かこの春から高校生って感じにしか見えないけど。 成人してんの? 詐欺じゃね」

「・・・」

余計なお世話よ。

それにしても、男子校なんだから当たり前だけど、どこを向いても男、男、男。

学ラン姿の生徒達がガヤガヤと騒ぎながら登校してくる。
女子校育ちの私にとっては、この雰囲気は初めての経験だった。


うぅ、気持ち悪い。
私はこみあげる吐気を必死に抑え込む。

本当にこの学校でやっていけるかしら。
私の胸は不安と恐怖でいっぱいだった。


「おいっ、あんた」

まだついてきてたのか、この子。
私は観念して振り返り、彼の目を見た。

「あんたじゃなくて、ちゃんと先生って呼んで下さい。 それから、ついてこなくていいから自分の教室に行きなさい」

先生らしく、ぴしっとした態度を取ったつもり。

それなのに、彼は私の言葉を聞いてぶはっと吹き出した。

「職員室、あっちだけど? そっちは旧校舎だから何もないよ」
















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