生徒に恋しちゃいました
私の足が向かっていた方向には古い木造の建物があり、ご丁寧に立ち入り禁止のロープがはられていた。
「うっ。わかってるわよ。あっちね」
彼の指差す方向に向き直ると、私は大股で勢いよく歩き出す。
「案内してあげようか?センセイ」
彼はクスクス笑いながら私を追い越すと、エスコートするように恭しく私の手を取った。
口では先生と言ってるけど、その態度は完全に私をからかっているようだった。
って、嘘でしょ・・・手に触ってる!?
いや・・
気持ち悪い・・・
気持ち悪い・・・
「ん? ちょっと、あんた。顔、真っ青だけど。 おいっ」
視界が暗く暗くかげっていく。
彼は倒れそうになった私の肩を咄嗟に支えてくれた。
親切からの行動なのはわかってる。
見かけによらず、わりと良い子なのね。
けど、
「いやっ、触んないで! 吐くっ」
私の叫び声に、周りにいた生徒達が一斉にこっちを向いた。
最後に見たのは彼の困惑した表情。
ーその後の記憶はぷっつりと途切れた。