生徒に恋しちゃいました
「そっか、3-Dの委員長なのね」

私は急病で休職することになった前任の先生に代わって、3年生のクラスを受け持つことになっていた。

新卒教師が3年生を受け持つことは異例だけれど、急な人手不足でやむなくとの事だった。

ふと顔をあげると結城くんの芸能人かと思うような整った顔が間近に迫っていた。

「ーそれと、クリーニング代くらいは払ってもらおうかと思って」

妙に色気のある低い声でそう言って、じりじりと近づいてくる。

うわっ、私より肌綺麗だし睫毛も長い。

切れ長の瞳に見つめられると、吸いこまれていきそうだった。

あー、でもこれ以上近づかないで。


ん?クリーニングってなに?

「まさか覚えてないわけ?
俺の制服に思いっきりゲロ吐いたこと。

しかもあんたがあんな風に叫ぶから、俺、完全に痴漢扱いされたんだけど」

「えっと・・・吐きそうって思ったことまでは覚えてるんだけど」

「吐きそうじゃなくて、吐いたんだよっ」

う、うそ〜。
最悪だ、私。
社会人初日に恥ずかし過ぎる。

そして、もっと最悪だったであろう目の前の彼をちらりと見る。

呆れたようにこちらを見ているけど、本気で怒ってる様子はなかった。


「・・・それは大変申し訳ないことを致しました。クリーニング代ね、もちろん払います」





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