生徒に恋しちゃいました
「今年度、3年D組を担当する広瀬桃子です。指導科目は国語です。
先生1年生だけど精一杯頑張るので、よろしくね」

学年主任の宮田先生に連れられて、ようやく自分のクラスに入って挨拶した。

本当なら朝のホームルームでするはずだったのに、初日から大失敗だ。

教室内はいかにも男子校といった感じだった。
机は乱雑に並べられ、生徒達も横を向いてお喋りしている子もいれば机に突っ伏して寝ている子もいる。

床や後ろの棚の上は漫画雑誌やらサッカーボールやらゲームソフトやらで散らかっている。


「センセー、広人にセクハラされて倒れたんでしょ。もう大丈夫なの?」

ドレッド?って言うんだっけ。
ダンサーみたいなクルクル髪の男子生徒が茶化すように私に話しかけてきた。

ヒロト?
私は手元の名簿を確認する。
あぁ、結城くんの下の名前ね。

あのクルクル髪は・・・山崎くんか。

「初日から皆に迷惑かけてごめんなさい。結城くんは具合の悪い私を助けてくれただけで、何も悪くないのよ」

「けど、結城はまじで手早いからさ。
気をつけた方がいいよ、センセー」

「桃子先生は色気ないから大丈夫っしょ。今時、中学生でももっと色っぽいよなぁ」

今のは山崎くんじゃなくて、別の生徒。
教室にどっと笑いがおきる。

色気ないなんて人に言われなくても、自分が一番知ってるわよ!




















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