青春と呼ぶには僕らはまだ青くない。
アテもなくフラフラとその町を歩いていた。


あの手紙にはこの町の消印が押されていたけれど、今もあの人がここに居るとは限らないのに。


そもそもあの手紙にも書いてあった通り、幼馴染みと結婚したならこの町にいるかどうかもわからない。


ーーーフッ


自然と笑いが込み上げた。


俺は見知らぬ町に来て何をやっているんだろうか?


何だかんだとそれなりの言い分を付けてはいるけれど、結局の所、ただあの人に会いたいだけじゃないのか?


かつて、実習生とは言え教師だったあの人に。


もちろん、会って今更どうこうしたいとかは無い。


けれど今でも時々、思う。


あの時、もっとゆっくりあの人への思いに向き合っていたなら結果は違ってただろうか?


簡単に教師と教え子の一線を越えてしまったこと。


あの人の思いを考えることもなく求め続けたこと。


俺がもっと大人な行動を取っていたなら今でも俺たちはーーー


今更、そんな事を考えている自分に笑いが込み上げる。


いい加減、アテもない散歩にケリをつけ空港へ向かおうとした俺はこれまで女と適当に遊んでいたツケが一気に回ってきたんだなと思った。


何故なら駅で偶然の再会をしてしまったから。


あの人と


そしてあの人のその家族と。


直ぐに分かった。


何故ならあの人はあの頃と全く変わっていなかったから。


いや、あの頃はまだあどけなさが残る感じがあったけれど今は落ち着いた大人の女性だった。


あの頃よりもーーー俺がまだ高校生だった時よりも更に綺麗になっていた。


無視して通り過ぎてしまえばいいのに、俺はその場から動けなかった。


そして同じ様にあの人もその場に立ちすくんでいた。


明らかに挙動不審な二人を目の前に見てあの人に手を繋がれた小さな女の子がそれぞれの顔を順に見る。


何かを察したのだろう、もう片方の手を取る男があの人に声を掛けた。


「知ってる人?」


見た目通りの優しい声だった。







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