青春と呼ぶには僕らはまだ青くない。
みぃくんは卒業後、予定通り就職をしてなっくんは院生となった。


私は何とか就職先も決める事が出来、ホッとしたのもつかの間、卒論の準備に早くも音を上げている。


「あのみぃくんですら、卒論だして卒業したんだもん。私に出来ないことないっ。」


「そうだよ。あの兄貴ですら………って言いたい所だけど兄貴は昔から成績だけは良いんだよなぁ。さほど勉強する訳でもないのに。」


学校帰りによく立ち寄る本屋さんで偶然になっくんに会った私は本屋さんのすぐ隣にある甘味処に来ていた。


ここの白玉ぜんざいは絶品だ。


卒論が行き詰まって……ってなっくんに愚痴った所、相談に乗るよとここへやって来たのだ。


きっと、甘いものを食べさせて私を元気付けようとしているのかもしれない。


実際、現金なもので甘いものを食べていると何だか卒論も一気に仕上げれる気がしてきた。


近頃、なっくんとよくこうして何処かのお店に入ったりする事が多い。


就職したみぃくんと違ってなっくんとは広いとは言え同じ学内にいる訳だから何かと会う事が多い。


みぃくんと一緒にいた頃とは違ってなっくんとの距離がぐっと縮まった気がする。


ぱっと見、そっくりだって思ってた顔もこうして近くで見ると微妙に違うんだよね。


みぃくんは甘い雰囲気を漂わせていたけど、なっくんはみぃくんよりもほんの少し全体的にシャープな作りになっている気がする。


長いまつげは二人とも同じだけど毛先がくるっとなっていたみぃくんと違ってなっくんは真っ直ぐに伸びていて同じ形の瞳を持つのに随分と切れ長な目の印象を与える。


短く切り揃えられた黒髪に真っ黒な瞳。


いつだって、誰にだって優しく柔らかな物腰で接するなっくん。


けれどーーー


実際はその黒に覆われた瞳はなっくんの真実を映さない。


考えてみると私はなっくんの何も知らない。










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