青春と呼ぶには僕らはまだ青くない。
この前、なっくんの解説をちゃんと聞かなかった為、まだまだ卒論で試行錯誤中の私はキャンパス内にあるベンチに座り息抜きをしていた。


思えばみぃくんと出会ったのはこのベンチだっけ?


みぃくんは就職してからもたまぁにメールをくれたりする。


つい昨日も仕事が忙しいらしく大変だって言ってた。


けれどやりがいをとても感じるとも。


それと例の女性とも連絡は取り合っているようだ。


お互いの夢に向かって励ましあったりしているらしい。


前まではみぃくんが他の女の人といるのを見るだけでも嫌だったのに、今では普通に応援してるよと言葉を返せている自分に一番驚いている。


いや、あのみぃくんがやり甲斐とか言ってる事に一番驚いているけど。


さてと、そろそろ息抜きも終えて帰ろうかなって立った時、私のいる中庭の向こう側にある廊下に見覚えのある後ろ姿を見つけた。


なっくんだ。


なっくんが所属する研究室へと続く廊下を歩いている姿を見つけた。


この前…変な感じで別れちゃったし思い切って声を掛けようとした時、その廊下の後ろから来た誰かがなっくんを呼び止めた。


その瞬間、私は動けなくなった。


何故ならーーー


なっくんが笑ってたから。


その人のーーー


その、女の人の目を見て笑い掛けていたから。


私はそれ以上、なっくんに近づけなかった。


ぼんやりと少し先に見える光景を夢の中のワンシーンの様に見る。


親しげに目線をちゃんと合わせながら会話をする二人。


時折、女の人がなっくんの腕に触れる。


ーーーー嫌だ


咄嗟に思った。


そして急速に気付いた気持ち。


そうか。


私、なっくんの事ーーーー







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