青春と呼ぶには僕らはまだ青くない。
けれど神様はどうしたって私を卒論に集中させてはくれないらしい。


突然、なっくんに告白された。


嘘?


だって、なっくんは助手のあの綺麗な女の人の事…


なのにどうして?


直ぐに返事を返せなくて少し考えさせて欲しいとだけ言った。やっとの思いで、それだけ伝えた。


私の事を好きだと言ってくれたなっくん。


つい最近になってなっくんを異性として意識し始めた私に取ってそれは夢のような状況な訳で…


なのに、


なのに、何故かこの告白を素直に喜べない。


胸の奥深くにチクリと小さな棘が刺さった様な…そんな痛みをもたらした。


きっとその棘はーーー


結局、臆病な私はその棘の痛みに気づかないフリをしてなっくんの告白を受ける事にした。


私の返事に対してなっくんは心底、ホッとした声を出してくれた。その様子を見ると棘なんて気にならなかった。気にしちゃいけないって思った。


けれどその言葉を聞いた時、やはり胸の奥がチクリと痛んだ。


ーーー兄貴とはもう連絡取らないで欲しい


その瞬間、気になっていた一つの事が頭を過ぎった。


なっくんが少し前、実家から出ていったこと。


こんな中途半端な時期に何故?


そして、突然の告白。


もしかして、なっくんが私と付き合おうとしたのは何か別の目的が…?


私の頭で考えた所でハッキリとした答えに行き着く訳もなく、それでも思いを寄せた人からの言葉なのだと思うとただ、うんとだけ返事をした。





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