青春と呼ぶには僕らはまだ青くない。
実家を後にした僕はナルの家がある最寄り駅に来た。そしてスマホを取り出しナルの番号をタップする。


ワンコール


ツーコール


スリーコールの前にナルの声が耳に届いた。


「なっくん…?」


久しぶりに聞くナルの声に胸がキュッと締め付けられる思いがする。


「ごめん、こんな遅くに。今、大丈夫?」


「えっ、あっ、うん。」


ナルの自宅に向かいながらそのまま会話を続ける。


スマホ越しにナルの緊張した声が伝わってくる。今すぐにでも抱きしめてやりたい。


「ナル…」


「ん、な、なに?」


「今、ナルんちに向かってるんだ。少しだけでいいから外に出て来れる?話したい事があるんだ。」


「い、今…?」


ナルの声のトーンが一気に下がったのが分かった。


やはり突然来たのは迷惑だっただろうか。


仕方ない出直すか。


けれど、今のこの思いだけはちゃんと伝えたい。


「ごめん、やっぱり良いよ。もう遅いしこのまま引き返すからただ伝えたい事がーー」


そう言いながら元来た道に方向転換しようしたら


「やだっ。」


ナルの声がスマホから響いた。


「えっ?」


「…帰っちゃ…やだ。」


「いや、でも遅いしお家の方にも悪いからーー」


「違うのっ。」


僕の言葉を遮るナオの迫力に少し驚く。そんなやり取りをしながらそのまま進んでいくとナルの家が見えてきた。


と同時に人影が…


「ナルっ。」


気付けば僕はナルの名を呼び走って駆け寄った。















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