恋の種をひとつぶ
今は秋だし、風邪を引いてしまうかもしれないし。
そう思ったわたしは、さんざん躊躇したすえに、勇気を出して、大熊くんに声をかけていた。
「〜あ、あのっ!!お、大熊くんっ!!」
ちょっとふるえた、でも十分、おおきな声。
けれど、大熊くんのからだは、ぴくりとも反応しなかった。
「大熊くんっ!」
「…………」
もう一歩進んだ位置から、声をかける。
……起きない。
「大熊くんっ!!」
けっこう間近から声を上げる。
……起きない。
「~大熊くんっ!!あの!!大熊くんっ!!」
「…………」
連呼しても、起きない。
「………」
……えーい!!
もうどうにでもなれ!そんな気持ちで手を伸ばし、ぽん。
大熊くんの肩にふれた、瞬間だった。