恋の種をひとつぶ
ペコペコ頭を下げながら、わたしはひっくり返った声で、謝罪をのべる。
「ごめんなさいっ、あの、えと、お、起こした方がいいのかなって!!思って!!おどろかすつもりはなくって、その……っ」
言葉尻がふるえる。
そんなわたしの目の前で、大熊くんが、のっそりと立ち上がった。
膝を曲げる、伸ばす。その一挙一動にさえ、風格がにじんでいる。
こうして向かい合って立つと、大熊くんは、いよいよ巨人だった。
わたしの頭の位置は、大熊くんの胸もとにもおよんでいない。
「………」
「………」
……重たい沈黙が、数秒続いた。
息がうまくできなくて、肺が痛かった。
いろんな場所に目を泳がせたあと、わたしは意を決して、おそるおそる、大熊くんの顔を見上げた。