恋の種をひとつぶ


6時間目は、体育の授業だった。


種目は跳び箱で、女子と男子に分かれて、わたしたちは列をつくっていた。


もうすぐ、順番が回ってくる。


跳び箱が苦手なわたしは、いつもならひときわ集中して、助走にはいることにしている。


けれど、今日はもう、跳び箱に意識を向ける余裕はなかった。



……いったいいつ、仕返しをされるんだろう。



こわい想像ばかり生まれては、頭のなかをぐるぐるまわる。



……放課後、いきなり「おい」って声をかけられたりして。


腕を引っ張られたりして。どこかに連れ込まれたりして。


……ううん。もしかしたら、校門前で待ち伏せしてるんじゃないかな。


どうしよう。他校の不良たちも一緒だったら。


おいおいチビのねーちゃん、ちょっと顔かせよって言われたら……!!


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