恋の種をひとつぶ
……いったいどうなるんだろう、わたし。
くちびるがふるえるだけじゃなく、歯までカチカチと鳴ってしまいそうだった。
ドスッ!と床に投げ落とされることを覚悟して、わたしはつよく目をつむる。
「………?」
けれど、お尻にふれたのは、かたい床の感触ではなかった。
もっとやわらかくて、沈み込むかんじの。
……目を開ける。
わたしがおろされ、座らされていたのは……保健室のベッドの、はしだった。
「……とりあえず、止血するから」
状況をのみこめていないでいるわたしに、大熊くんはそう言うと、保健室の棚をあさりはじめた。
勝手知ったるなんとやら。迷うことなく、消毒液やガーゼやらを手に取っていく。
戻ってきた大熊くんは、スッとわたしの足もとにしゃがむと、分厚いガーゼを傷口にあてた。