恋の種をひとつぶ
「っ、」
上から軽めに圧迫され、ピリッとした痛みがはしる。
緊張しすぎて、今の今まで、自分がケガしたことを忘れていた。
「……痛いか?」
わたしが大げさに身をふるわせてしまったからか、しゃがんだ状態の大熊くんが、心配そうに聞いてくる。
ぶんぶん首をふると、頭の上のおだんごまで、一緒にゆれた。
……まさか、大熊くんが、手当てをしてくれるなんて。
目の前の光景が信じられずに、わたしはパチパチと、続けて多めのまばたきをする。
……な、なんで?
わたしを連れ出したのは、昨日の仕返しのためじゃないの?
昨日のこと、怒ってたんじゃないの……?
おたがい向き合って、おたがいに静止している状態が、数秒間続いた。