恋の種をひとつぶ
目の前に、大熊くんがいること。
その大熊くんに、ガーゼごしにふれられていること。
恐怖と変な緊張がごちゃまぜになって、わたしの鼓動をはやくする。
バクバクと、どんどん大きくなっていく。
「……あ、あのっ」
気まずさに、耐えられなくなった。
何かしゃべらなくちゃ。そう思ったわたしは、うわずった声を発していた。
大熊くんの視線が、わたしに向けられる。
近い距離からの強いまなざしに、喉の奥がぐっと、しめつけられる。
「あの……あ、ありがとう」
「………」
「大熊くんって、その……手当てとか、できる人なんだね!!」
「………」
「…す、すごいよねっ!?わたし、人の血とか見たら、パニックになっちゃってなにもできないもん!!あはは、あは……」