恋の種をひとつぶ
消毒物品を片づけてくれていた大熊くん。
かべにかかった時計を見て、わたしにそう尋ねる。
「う、ううん」
ふるふると、小さく首をふった。
だって今戻るのは、さすがに恥ずかしいから。
「もう少し、ここにいようかな……」
「……そうか」
かすれた声が、耳に届いた。
「あの…大熊くんは、戻ってくれて、いいよ……?」
こわごわそう言ったけれど、大熊くんは、出て行くそぶりを見せなかった。
出て行くどころか、なぜかもう一度、わたしの前に歩いてきて。
「っ!?」
ドスッ!と座り込んだものだから、わたしは思わず、変な声をあげそうになった。
「あー………」
「…!?……!?」
「……うん。あのさ」
びっくりマークとはてなマークを、交互に頭の上にうかべるわたしに、チラッと視線を送って。