恋の種をひとつぶ
見事にタイミングがかぶってしまって、わたしたちは、おたがいに息をのむ。
わたしと大熊くん。
……目をそらしたタイミングも、同じだった。
「あ……お、お先に、どうぞ」
「……いや……」
「………」
「………」
「………」
「……気ぃつけろよ」
「えっ」
「……ケガ。顔じゃなくてよかった」
ーー顔じゃなくてよかった。
目線を合わせないまま、ぼそりとつぶやかれた言葉。
きゅうっと。苦しいくらい、のどの奥がしまる。
「………っ、」
……なんだろう。これ。
心臓が、ドキドキしている。
はやいペースで鳴っている。
でも、こわいからじゃない。
こわいとか、緊張とか……そういうのじゃないの。
向かい合ったまま、授業終了のチャイムが鳴った。