恋の種をひとつぶ
「いや、へえ〜ほお〜じゃなくてさぁ!!」
どん!と机におちた、悠真ちゃんの握りこぶし。
悠真ちゃんは、わたしをじろりと見つめて、眉間にしわを寄せた。
「亜由美ももうちょっと、恋愛ごとに興味持ちなよねっ!?」
「き…興味がないわけじゃ……」
「もう高2だよ!?悠長にかまえてたら、一度も彼氏できないまま、高校生活終わるよ!?」
悠真ちゃんはそう言って、わたしの手をつよく握った。
「もったいないよ!せーっかくこんなに可愛いんだから!!」
「……全然可愛くないよ……」
わたしは後ろにのけぞりながら、力なく笑ってみせた。
一重だし、鼻も丸いし、決して可愛いとは言えない自分の顔。
そんなわたしに可愛いらしいところがあるとすれば、きっとそれは、身長くらいだ。