恋の種をひとつぶ
「で、毛先を入れ込んで、ピンでとめていくのっ!!」
「……ふーん。すげーな」
わたしの説明を聞いたあと、大熊くんはぽつりと、そんな感想をもらした。
大熊くんの視線をうけたせいだろうか。
おだんごが、ぽかぽかする。熱をもったように感じる。
髪の毛に血液なんて通っていないのに。
温度なんてないはずなのに……やっぱり最近のわたしは、おかしい。
「……じゃ、いくわ」
「う、うんっ!!」
大熊くんは、大きな足を靴にはめこんで、スポーツバックを肩にかけ直した。
外にむかって歩き出す。
大股で去っていく、おおきな体。
わたしにはない、がっしりとした筋肉の鎧。
ツンツンした短めの黒髪。
……どうしてかな。目が、はなせなかった。