恋の種をひとつぶ
皮膚も、髪の毛も、何もかも。
わたしと大熊くんは、まるきりちがう。
大熊くんは、わたしとは全くべつのものでできてるよなぁ。
そんな風に思って、ぼうっと見送っていたとき、ふいに、大熊くんが振り返った。
目が合った。
心臓が、跳ねた。
「……っ、」
先に目をそらしたのは……今度は、わたしの方だった。
数秒してから、そろりと、顔を上げる。
大熊くんは、もうこっちを見てはいなかった。
すたすたと去っていく後ろ姿は、まぶしい昼下がりの光に、溶けるように消えていった。
「はあ………」
脱力して、息をつく。
はく息が、あつい。
ほっぺたに、両手を当てた。
……ほっぺたまで、あつい。
「なに…これ……」
今は10月。季節は秋。
なのに、わたしの体のなかだけ、真夏になってしまったみたいだ。