恋の種をひとつぶ


皮膚も、髪の毛も、何もかも。


わたしと大熊くんは、まるきりちがう。


大熊くんは、わたしとは全くべつのものでできてるよなぁ。


そんな風に思って、ぼうっと見送っていたとき、ふいに、大熊くんが振り返った。


目が合った。


心臓が、跳ねた。



「……っ、」



先に目をそらしたのは……今度は、わたしの方だった。



数秒してから、そろりと、顔を上げる。


大熊くんは、もうこっちを見てはいなかった。


すたすたと去っていく後ろ姿は、まぶしい昼下がりの光に、溶けるように消えていった。



「はあ………」



脱力して、息をつく。

はく息が、あつい。



ほっぺたに、両手を当てた。


……ほっぺたまで、あつい。



「なに…これ……」



今は10月。季節は秋。


なのに、わたしの体のなかだけ、真夏になってしまったみたいだ。








< 41 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop