恋の種をひとつぶ

*
*



微熱のような症状は、ずっと続いて。


むかえた、週末間際の金曜日。



「お、栗原。いいところに」



放課後。用事があって職員室にいたわたしは、数学の佐伯先生に、呼び止められた。



「はい?…〜わっ!!」

「これ、託すわー」



振り返ってすぐ、ドスッ!と渡されたのは、積み上げられたノートの山だった。


佐伯先生は、めがねの奥でにまっと笑うと、わたしにお願い……というより、指令を出した。



「これ、2年A組から回収してた分。チェック終わったから、各自の机に返しといてくれ」

「えっ!わ、わたしが、ですか?」



おどろいて目を見開いたわたしに、先生はわざとらしく顔をしかめ、腰をさすりながら言った。


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