恋の種をひとつぶ
でも全然起きなくて。
勇気を出して肩をたたいたら、大熊くんが、やっと反応して。
顔を上げて、わたしを見て……跳ね上がって。
「……ふふ」
思い出すと、自然と笑みがこぼれてしまった。
それで……大熊くん、イスから落ちたんだよね。
あの瞬間は、とんでもないことをしちゃったって肝を冷やしたけれど。
今振り返ってみたら、なんだかかわいいエピソードに思えてくるから、すごく不思議だ。
流れるように思い出す。
その、次の日のこと。
……学校に行くの、ゆううつだったな。
大熊くんのこと、こわくてしかたなかった。
そんななか、わたしが、体育の授業でケガをして。
大熊くんに、お姫様だっこで、保健室に運んでもらうことになったんだよね。