恋の種をひとつぶ
……ええと、これは、香川さんのだ。
香川さんは、1番前の席だよね。
一人一人、名前を見て、席の場所を確認して、机にのせていく。
誰がどの席か、なんて、普段はなんとなくしか見ていないものだ。
思ったより難しい作業。
チクタクと、時計の秒針は進んでいく。
……あ、これ、悠真ちゃんのだ。悠真ちゃんはこの席。
大野くんは、左列の2番前。
川田さんは……ええと。窓際の3番目、だったよね?
クラスメートたちの席順を頭に思い浮かべて、もくもくと配り歩いていく。
半分ほど配り終えたところで、次に手にしたノートにはーー
「………あ」
2年A組 大熊 久司
角ばっていて、豪快な字で、つづられた名前があった。