恋の種をひとつぶ


「……これ…………わたし?」



大熊くんの顔を見上げて、くちびるに力を入れて、わたしはたずねた。


クラスのなかで、おだんご頭はわたししかいない。


それに、描かれた黒いリボンは、今わたしの頭にも、ついているものだ。



ーーこれ、わたし?


その問いかけに、大熊くんは、うつむきながら、こくりとうなずいた。


くちびるを噛み、右手のひらを顔に当てる、大熊くん。


大熊くんの手は大きくて、顔をほとんど、おおえるほどで。


でも隠しきれていない部分に、真っ赤な色が、のぞいている。



……心臓が、とくんと動く。


とく、とく、とく。速く動いて、わたしになにかを知らせている。



……ねえ、大熊くん。



「もうひとつ、聞いてもいい……?」



声を絞り出す、のどがあつい。


なんでだろう。泣きそうだ。


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