恋の種をひとつぶ
……ねえ、大熊くん。
「どうしてわたしの絵なんか、描いてくれたの……?」
……大熊くん。
あのね。もしね。
もし、大熊くんがわたしの期待している答えをくれたら。
ノートの隅にわたしの絵を描いてくれた理由が、わたしの期待しているものだったら。
わたし、もうすっごく喜んじゃうけど、いい?
大熊くんのこと、好きになってもいい?
っていうか。
……もう好きになっちゃってるんだけど、いいかなぁ?
大熊くんが、顔を隠していた手を、ゆっくりとおろす。
一度、まばたきをして、わたしに真っすぐな視線を向ける。
真剣なまなざし。
大熊くんの瞳のなかで、わたしの影が、ゆれている。
「あー……、ちょっと、待って」
大熊くんの低い声が、わたしの鼓膜をふるわせる。