恋の種をひとつぶ
きっかけは、単純。
小さなことの、積み重ね。
たまたま、二人っきりになった放課後。
思いきって、声をかけたこと。
肩をたたいたこと。
わたしがケガをしたこと。
大熊くんが、わたしを運んでくれたこと。
お礼を言ってくれたこと。
すこし緊張しながら、あいさつを交わしたこと。
たまたま頼まれた、ノート運搬。
たまたま、開いたページ。
たまたま見つけた、らくがき。
……気づいたの。
日常にはたくさん、きっかけが転がっているってこと。
ちょっとした出来事が、恋の種になるんだってこと。
「俺……」
「…うん……っ、」
「……俺、さ」
……きっと、恋ができない人なんていない。